日本財団 図書館


 

井上氏 痛くても練習する。
松本氏 名馬は故障しない。医者に来るのは調子を落としているか、故障しているかどちらかであるので、名馬ではないということである。
西田氏 中村さんは故障の時の休養についてどう思うか。
中村氏 ベンチ要員だったので、たまたま起用される時が我々の見せ場となる。痛いと言えば出場させてもらえない。ボーダーライン上の選手はぐっと我慢である。監督になってからは選手をよく見ている。我慢強い選手は自分から痛い、休養したいと言わないので動きをよく見てストップさせることが大切である。やらせすぎるとつぶれてしまうので見極めが大切である。
西田氏 渡辺さんは黙ってじっと生徒を見ているだけで、故障をしているのかどうかわかりますか。
渡辺氏 「わかります。」そうなるまでには時間がかかった。我慢する選手が多く自分からは言ってこない。まして、強くなりたい選手は全く言わない。指導者が動きをよく観察し、判断して医者に行くようすすめる。
西田氏 大会までに「休養させたい。」と思うときは、選手に何をして欲しいか。又、どんな休養を求めるか。
渡辺氏 休養はとらないが、日曜日は散歩程度で、普段の生活リズムをくずさないようにさせている。
西田氏 全国的に通じる為にはそこまでリズムをくずさないことが大切。松本さんの提言の中で芝生の話に興味を持った。芝生とは施設のことだと思う。
松本氏 子どもの頃から、公認の競技場を使って練習できる種目は世界で戦えている。スポーツ医学では、6才頃から巧ち性を高める運動をさせる。12才〜13才頃は、呼吸機能のトレーニングをし、高校生から筋力を鍛える。こういったことに応じた環境条件を整えることが大切である。このことから、球技では芝生、あるいは草のグランドで子どもの頃からボールに触れることができれば、サッカー、ラグビーも楽しく障害もなく世界に近づくことができる。
西田氏 今の話はワールドカップを開催しようとする国の話かと思う。柔道で畳のない所でやるのと同じだ。有益な経費の投入と使途が大切で、日本のスポーツの方向をしっかり考えたい。
西田氏 スポーツ選択の中で、複数の部活動を体験することをどう思うか。又、中学生の頃から1種目一筋でやるのがよいのか。又、ある程度ある時期にいろいろなスポーツをするのがよいのか。
中村氏 バレーボールでは小学生の時には楽しさ、中学生では少ない試合数の中で、自己実現ができる喜びを教える。高校生頃に、どんなものがむいているか、能力が潜んでいるか指導者が見極める。そして、17才〜23才頃、身体の成長と同時に技術、戦力を憶えさせるのがいい。中学生は成長が激しく、我々の目に見えない能力が潜んでいる。いろいろな運動をさせ、適性を見抜くことが大切である。
西田氏 リズムが大切と言われたが、中学生のスポーツ選択についてどう思うか。
渡辺氏 無理をせず、いろいろなスポーツを行い身につけることが大切である。自分の経験では、早くから頂点にたつと目標を失ってしまい伸びない。いわゆる「燃え尽き症候群」となる。
中村氏 有名になった選手は、小・中・高校では本格的な運動をしていない。17才〜18才ぐらいで指導者に巡り会い伸びてくる。勝利主義で練習をやりすぎていると、燃え尽きてしまい精神的に疲れ、嫌がってしまう。長い目で見ると、いろいろなスポーツを楽しみ体験させ、その中から自分で選択させるのがよいと思う。
西田氏 身体の方から見るのと、心理面からみるのとどちらが大切だろうか。
松本氏 種目や特性によって違うが、一番花が咲くいわゆる心技一体となる年齢はさまざまである。若い時代にいろいろな運動を行い、動きを憶えることはその種目を完成させるために必要となる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION